3D変位量測定MIMOレーダーによる変位可視化システム
MIMO Radar for 3D Displacement Measurement in Structural Health Monitoring

インフラの健全性を可視化し“予防”から“予知”へ
本システムは、MIMO(多入力多出力)アーキテクチャと合成開口レーダー(SAR)技術を融合させた固定設置型レーダー装置です。構造物の表面における微細な動的・静的変位を、非接触・非破壊で高精度に三次元的に可視化します。
従来の目視検査や離散的な点センサでは検出が困難だった「面全体のごくわずかな変化」も、ミリメートル〜サブミリメートルオーダーで検出可能。長期モニタリングや劣化兆候の早期発見において、極めて有効なソリューションとなります。
弊社は本システムの企画・設計に携わりました。
1. 時系列変化の蓄積と傾向分析で、構造リスクを事前に検出
このレーダーは、リアルタイムに変位量を3Dマップ化し、時間軸での変化を蓄積。周期的な振動や徐々に進行する変形、突発的なたわみといった“ゆるやかな劣化”や“壊れる前の兆候”を可視化します。変位マップによる色分け表示(赤=大きな変位、緑=安定部位)により、問題のあるエリアを直感的に判断可能です。
2. 点検から常時モニタリングへ、予知保全の中核ツール
歪みゲージや加速度センサのような設置型の点計測では把握しきれない面状変位や構造全体の挙動を、高速かつ高精度でトラッキング。
橋梁、トンネル、煙突、地盤などあらゆる構造物に対して、「壊れてから補修」ではなく「壊れる前に対策」する予知保全型メンテナンスへの転換を実現します。
3. 来志向のメンテナンスを支えるセンシング技術
壊れた後に慌てる時代から、“壊れる前に気づける時代”へ。
MIMO-SAR 3D変位測定レーダーは、インフラ管理の新たな常識となる予知保全の中核ツールとして、多くの分野での導入が進んでいます。
4. ケース・スタディ

自然災害リスクの予兆監視
土砂崩れ・地滑り:地表の微小な動きから、危険斜面を早期に警告
落石:崖の歪み・岩塊のわずかな移動を検出し、通行危険区域を事前特定
雪崩:雪面の層構造変化と滑動兆候をリアルタイムで捉え、雪崩予測に活用

各種橋梁の構造モニタリング
PC橋:亀裂・応力集中をリアルタイムに可視化し、補修判断に貢献
鉄道橋:熱変位・交通振動を追跡し、疲労の蓄積を事前検出
高速道路橋:過重部位の特定と局所補強に最適
海上橋梁:塩害や腐食進行を早期検知し、耐久性を維持

送電鉄塔の安定性評価
懸垂鉄塔:風雪による傾きや微細変形を常時監視
引留鉄塔:ケーブル緊張と地盤変動を追跡、倒壊リスクを抑制
耐張鉄塔:張力の異常や緩みの兆候を早期検出
捻架鉄塔:不均衡荷重を解析し、構造ストレスを最適化

プラント設備の健全性管理
発電設備:タービン・発電機の振動から劣化傾向を抽出
化学プラント:熱・圧力による構造負荷を監視
石油・ガス施設:タンク・配管の微変形と振動をトレース
食品プラント:生産設備の変位検出による品質・効率向上

ダム構造の変位監視
重力式ダム:沈下・歪みをリアルタイムに監視
ロックフィルダム:浸食・変形の初期兆候を捉える
アーチ式/バットレスダム:応力集中部の変位挙動を3Dマップ化

トンネルの安全性評価
山岳トンネル:岩盤の動的変形を検出し、落石リスクを低減
海底トンネル:地質変動と水圧応答を可視化
都市トンネル:地下水・交通振動による影響を早期監視

超高層建築の動的応答監視
超高層マンション:風・地震時の微細変位をトラッキング
商業ビル:構造の歪みや経年変化を数値化し、災害対応力を強化

歴史的建造物の文化財保全
城・多重塔・煉瓦建築・ドリス式、イオニア式、コリント様式の建築物
微細な傾き・沈下・振動を非接触で監視し、修復判断・地震後評価に活用

河川堤防の保全・強化
土堤防・石堤防・コンクリート・植生堤防における変位挙動を常時監視し、決壊や浸食のリスクを未然に防止

風力発電設備の予兆監視?
陸上風力:プロペラ・タワー・タービンの微細挙動をトラッキング

ドローン飛行制御への応用
制御通信:GPS・画像処理が通用しない環境において、3D変位量観測レーダーが空間認識の基準軸として機能。
空間マッピング:暗所・金属空間での安定飛行とマッピングを実現
飛行安定性検査:プロペラの異常振動、機体の異常振動を検出し安定したドローンを開発

乗り物の構造・振動評価
航空機・自動車・モーターバイク・列車・船舶の構造挙動やエンジン振動を可視化し、安全性と性能の最適化
5. AIがもたらすこれからの予知保全
予知保全は、構造物や設備の微小な変位、振動、歪みをセンサーで常時監視し、異常の兆候を早期に捉える技術です。これにより、土砂崩れやインフラ老朽化などの危険を事前に察知し、事故や災害を未然に防ぐことで、何よりも尊い人命を守ります。
このプロセスにおいてAIは、膨大なセンサーデータを高速かつ高精度に分析し、人間では見逃しがちな微細な異常パターンや劣化の兆候を発見する上で中心的な役割を担います。過去のデータや多様な環境要因を学習させることで、将来のリスク発生確率や故障時期をより正確に予測し、適切な避難指示や最適なタイミングでの対策・補修計画の立案を支援します。
橋梁、トンネル、プラントなどの安全性を確保し、地域住民や利用者に日々の安全安心を提供するとともに、AIによる分析・予測は維持管理の効率化、インフラの長寿命化、コスト削減にも大きく貢献します。このようにAIとの連携により予知保全はさらに高度化し、人々の安全安心を守り、持続可能な社会基盤を支える上で不可欠な技術となっきています。